
「Cloudflare OS って出たらしいけど、Windows の代わりになるの?」
情シスをやっていると、新しいカタカナ(と英語)が出るたびに、こういう質問がフロアを一周します。僕も最初は同じことを考えました。
先に結論です。Cloudflare OS は、パソコンの OS ではありません。会社の中で AI を安全に使うための「AI ワークスペース」で、中身はオープンソースです。 Cloudflare が 2026 年 8 月に発表しました。
この記事では、Cloudflare の公式発表と GitHub の README に書かれていることだけをもとに、初めての人でも分かるように整理します。
結論:Cloudflare OS をひとことで言うと
| 見かた | 答え |
|---|---|
| 何者? | 従業員ひとりひとりに、AI ツールと社内システムへのつなぎ口を備えた作業場所(ワークスペース)を用意する仕組み |
| どこで動く? | Cloudflare のグローバルネットワーク上。自分の Cloudflare アカウントにデプロイして使う |
| 誰が作った? | Cloudflare。もともと自社の社内向けに作り、社内で使い込んだものを公開した |
| お金は? | オープンソース(Apache-2.0 ライセンス)。公式ページや発表に、Cloudflare OS 自体の料金は書かれていません |
| いまの状態は? | README には「early access(まだ粗い部分が多い)」と書かれています |
「OS」と名前に付いているのは、仕組みが OS によく似ているからです。次の節で、おなじみの Windows の言葉に置き換えてみます。
なぜ「OS」と呼ぶの?
README では、Cloudflare OS の部品を、ふつうの OS の部品になぞらえて説明しています。
| ふつうの OS | Cloudflare OS | ひとこと |
|---|---|---|
| カーネル | ワークショップのバックエンド | ユーザー・アプリ・外部サービスを結びつけ、隔離と権限管理をする中心部分 |
| デバイスドライバ | Gatekeepers(ゲートキーパー) | 外部サービス(GitHub や Slack など)との間をとりもつ窓口 |
| シェル | ワークショップのフロントエンド | 利用者が触るブラウザの画面 |
| プロセス | ガジェット | 利用者ごとに作られる、小さな専用アプリ |
| 実行ファイル | ブループリント | ガジェットの元になる設計図。共有できる |
| ACL(アクセス制御リスト) | 共有の権限 | 誰にどこまで見せるか |
Windows でいえば、ドライバを経由してプリンターを使い、アクセス権で「見ていいフォルダ」を決めますよね。AI に社内のものを触らせるときも、同じように「窓口」と「権限」で守ろう、という発想です。
何ができるの?
Cloudflare の発表で挙がっている機能は、大きく 4 つです。
- 誰でも使えるエージェントのワークスペース: ブラウザから使えます。プログラミングの経験がなくても、調べもの、最新データを使った文書づくり、決まった作業の自動化などを頼めるとされています
- 誰でも作れて共有できるアプリ: AI に作らせたものを、独立したデータベースやアクセス制御つきのアプリにできます。ほかの人がそのまま使うことも、自分用に作り変えることもできます
- 最初からゼロトラスト: Cloudflare Access を土台に、利用者とリクエストごとに確認します。AI エージェントは、最初は何の権限も持ちません
- 好きなモデルを使えて、お金も見える: すべての AI 呼び出しが Cloudflare AI Gateway を通ります。モデルの提供元を自由に選べ、個人・チーム・アプリごとの支出を見て、予算や回数の上限を設けられます
特に 3 つ目が、情シスとして一番気になるところです。
一番のキモ:Gatekeepers(ゲートキーパー)
AI に仕事をさせるには、社内のシステムにつなぐ必要があります。でも、AI に「合鍵」を丸ごと渡すのは怖い。
Cloudflare OS では、Gatekeepers が間に立ちます。README と発表の説明をまとめると、役割は次のとおりです。
- 外部サービスへの接続を仲立ちする
- 認証(OAuth)を受け持つ
- アクセスできる範囲を絞る
- 操作の記録を残す
- 副作用のある操作(書き込みなど)は、人の承認を挟める
飲食店でいえば、お客さん(AI)が冷蔵庫(社内システム)を直接あけるのではなく、いつも「注文窓口」を通すイメージです。窓口は「このお客さんは、このメニューまで」と決めていて、注文の記録も残します。
README にあるコネクタ(Gatekeeper)は、GitHub、Google、Cloudflare、Supabase、Notion、Confluence、Email Workers、Home Assistant、Slack、Spotify、X、ZoomInfo です。
仕組みの用語を、まとめて整理
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| ワークスペース | 従業員ごとの作業場所。ブラウザで使う |
| ガジェット | AI に作らせる、小さな個人用アプリ |
| ブループリント | ガジェットの設計図(コード全体)。共有して、相手が自分用に変えられる |
| Gatekeepers | 外部サービスとの窓口。権限・記録・承認を担当 |
| Cloudflare Access | 「誰が来たか」を確認するゼロトラストの入口 |
| AI Gateway | AI 呼び出しの通り道。モデルの選択と費用の管理 |
| MCP Portal | 社内システムをつなぐ入口(Cloudflare 社内の導入記事で、基幹システムへの接続に使ったと説明されています) |
なぜ Cloudflare は、これを作ったの?
Cloudflare 社内の導入記事(CIO の Sam Rhea さん)によると、きっかけは「営業担当が、アプリを作るために API キーを何個も欲しがった」ことでした。AI エージェントが実際に作業できるようになると、社員は便利さのために広い権限を求めがちになります。
プレスリリースでも、会社でよく起きる問題として次のような点が挙げられています。
- セッションのたびに、社内の事情を AI に説明し直さないといけない
- 自前で作ろうとすると、数年と数百万ドル規模の費用がかかる
- その間に、社員が公式でない方法を使い、IT 部門が把握できなくなる
導入記事には、Cloudflare 社内の原則も書かれています。
- 人は誰でも「スーパーパワー」を持てるようにする(エンジニアだけの道具にしない)
- 成果物の責任は人間にある
- AI を使っても、その人が基幹システムで持つ権限を超えない
最後の原則は、情シスの感覚にもぴったりです。AI は「本人の分身」であって、本人より偉くなってはいけません。
試すには
リポジトリは cloudflare/cloudflare-os で、ライセンスは Apache-2.0 です。README に書かれている入り口は 3 つです。
| 方法 | 内容 |
|---|---|
| ローカルで試す | pnpm run-local を実行して、http://localhost:8787 を開く。動作確認用で、本番運用向けではないとされています |
| 自分の Cloudflare アカウントにデプロイ | 公式のデプロイ画面(os.cloudflare.app/deploy)を使う。Gatekeeper の追加やコードの変更をするなら、スターターのリポジトリを使う |
| 自前のサーバーで動かす | README では COMING SOON(準備中) |
pnpm run-local
必要なものとして README に書かれているのは、pnpm、Cloudflare アカウント(デプロイするとき)、Gatekeeper ごとの外部サービスの OAuth 認証情報、LLM プロバイダーです。README には「多くのサービスで OAuth の認証情報の取得が難しい」とも書かれています。
注意点: README は現在 early access の段階で、粗い部分があると明記しています。いきなり全社展開ではなく、まず小さく試すのが現実的です。
僕のやらかし:「OS」と聞いて、インストーラーを探した
発表を見かけた日、僕は「OS」の 2 文字だけで反応してしまい、ダウンロードページでインストーラーの ISO を探しました。もちろん、そんなものはありません。
ふだん「OS」といえば Windows と Linux の世界にいるので、頭が勝手に変換するんですね。ラーメン屋で「ごはん」と書いてあるのに、おかわり自由の大盛りだと思い込んで、ご飯の量を聞いて笑われるようなものです。名前より、中身を読む。これを自分に言い聞かせました。
どんな人に向いている?
| 向いている | まだ待ったほうがいい |
|---|---|
| 社内の AI 利用を、止めずに管理したい情シス | 「いま、確実に動く完成品」が欲しい(early access のため) |
| Cloudflare Access や Zero Trust をすでに使っている | 自社に Cloudflare アカウントや運用の担当がいない |
| 非エンジニアの社員にも AI を使わせたい | 外部サービスの OAuth の準備に、手が割けない |
続きの記事では、Cloudflare OS のマネージドサービス(自分で組まずに使う提供形態)について、公式に書かれていることとメリットを整理しました。
→ Cloudflare OS のマネージドサービスとは?メリットを整理
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まとめ
- Cloudflare OS は、PC の OS ではなく、会社で AI を安全に使うための AI ワークスペース(オープンソース)
- 「OS」と呼ぶのは、部品の役割が OS によく似ているから
- 肝は Gatekeepers。AI に合鍵を渡さず、窓口で範囲を絞り、記録を残し、必要なら人が承認する
- README では early access。まずは小さく試すのがおすすめ
参考
- Cloudflare OS(Cloudflare 公式プレスリリース)
- How we use AI with Cloudflare OS(Cloudflare Blog)
- cloudflare/cloudflare-os(GitHub)
- Cloudflare OS マネージド版のページ(Cloudflare 公式)
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